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プロジェクトストーリー 鳥飼八幡宮式年遷宮プロジェクト祖霊殿新築工事

EPISODE 2. デザインの魅力を実現させるために

EPISODE 2. デザインの魅力を実現させるために

 Photo:NOBORU INOUE

「この納骨堂に宇宙を表現してください」という依頼

山内宮司:
鳥飼八幡宮では、境内末社に天之御中主神(アメノミナカヌシ)を祀っています。このお神様は、宇宙の大元であり北斗七星を司っていることから、「この納骨堂に宇宙を表現してください」という依頼をしました。納骨される方々は天之御中主神のご神徳のもと宇宙の大元に抱かれながら眠るという世界観を表してもらっています。

二宮代表:
テーマを宇宙とした上で、「見たことのあるような普通の建物はいらない」「唯一無二の新しい場所をつくってほしい」という依頼でした。難しいオーダーではありましたが、制限なくどこまでも自由な発想で設計してくださいという宮司さんの考え方に鼓舞されました。

自然と一体化して森に還っていく『祖霊殿』の在り方

山内宮司:
昔からここに存在していたような、建物の❝在り方❞ にしてほしいと伝えました。そして、将来的にはこの建物が自然と一体化して森に還っていくようなイメージで設計と施工をお願いしました。

二宮代表:
『祖霊殿』が建つのは、公道に面した側から本殿付近まで続く緩やかな傾斜がある場所です。土地に高低差があるため、本殿側から『祖霊殿』をご覧になる方にとっては、窓なども見えずまるで岩のように見えます。「境内の端にある岩のようなもの」というくらいひっそり佇む建物の中にどうやって必要な内面を落とし込むかということを、遺跡などをヒントに発想しながら、模索しました。

村田課長:
具体的に言うと、奈良県の石舞台古墳(※)のようなイメージです。もっと古墳の様にするにはどうしましょうか、という話し合いをよくしていました。土に埋まって、緑が入り込んで…など、建物自体の存在感を減らすように、意見やアイデアを出し合いながら取り組みました。

EPISODE 3. 現実に落とし込む、施工という仕事

EPISODE 3. 現実に落とし込む、施工という仕事

四角の部屋がない、多面的な空間の施工

村田課長:
初めて設計図を見た時は、「これは無理だろう」と驚きました(笑)。まず、大前提として普通、建物には四角の部屋があるのですが、『祖霊殿』の設計図には一つもありません。多面体の建物で、なおかつ斜めに立つ壁や様々な形状の壁があります。それぞれをCAD上で検証して構築する作業がかなり大変でした。

また、新築であるのにもかかわらず、この場所に昔からあったような佇まいを作ることも元々の趣旨でした。それを実現するにはどうしたらいいのか、各地の炭鉱などの遺構や古墳などを参考にしながら様々な手段を考えました。

宇宙を表現するような、自然界と調和する空間の再現

特徴的な壁面の柱

村田課長:
1階から3階まで高さ8mに及ぶ吹き抜けの大空間です。壁面の柱のデザインが特徴的なのですが、最初に大工さんが様々な模型をつくり、その中から選定しました。
施工にあたり、まず四角い柱を斜め45度で半分に切り、二等辺三角形の形状にします。
通常、角材は四角に切るものですので、半分に切るという作業がものすごく難しいんです。
足元から木が生えているイメージにするために、切った木材を1階の床から立てていきました。高さが8mもありますので、天井の中にもこの柱を支持するための補強材を仕込むなど見えないところにも工夫を凝らしています。

北斗七星を映し出す天窓

山内宮司:
吹き抜け空間の天井にある7つの小さな天窓は、北斗七星を設えています。夏至の前後約1カ月は差し込む光で床に北斗七星が映し出されます。

二宮代表:
夏至の日の太陽の高度に合わせて、角度を傾けて取り付けているんです。設計した私はそこまで望んでなかったのですが(笑)、村田さんがアイデアを出して「やりましょう」と。こういった創意工夫や仕掛けが建物内外に数々あります。仕事量が2倍や3倍となる手間を惜しまずコンセプトを具現化していただくことで、家のようなつくりではなく、「非日常」を感じる建物へとなっていきました。

それぞれの立場・専門から知恵を搾り合い、生まれたもの

二宮代表:
建設中は毎週定例会議を行って、知恵を出し合っていました。施主である鳥飼八幡宮さん、施工する内藤工務店さん、設計する私共、それぞれが同じ方向を見上げて三位一体になることがとても重要で、そこに至ると何か一線を越えてきます。
建物が完成したことはもちろん嬉しいのですが、それ以上に信頼関係のあるプロジェクトチームがきっちり作れたことへの達成感はとても大きいです。

村田課長:
本当に自分の記念になるような現場でした。これまでも特殊な建設物を数多く手掛けてきたのですが、今回はこれまで以上に頭をひねりました。今後、どのような建物であろうと「出来る」という自信もつきました。

山内宮司:
思っていた以上のものを作っていいただきました。素晴らしい仕事に感謝しています。
『祖霊殿』は自分の子どもだと思っていますので、これから共に成長していければと思っています。実は、『祖霊殿』もまだ成長過程なんですよ。建物内も外もこれからさらにブラッシュアップしていきます。ですから、今回のプロジェクトチームとは長いお付き合いになると思います。

様々なモノをかたちづくる、建築という仕事

村田課長:
仕事をするにあたって、「絶対に出来ないもの」はありません。自分が出来ることに一生懸命に取り組み、試行錯誤を重ね、様々な方の協力を得ていけば、必ず実現化することができます。建築の道は、複雑で封建的な面もある仕事ではあるのですが、一生懸命努力すれば『祖霊殿』のような特殊な建物も手掛けられます。これから建築を志す人は、ぜひこのような建物を参考にしながら、色々なことを試行錯誤し、建築の道に入ってもらい邁進してほしいと思っています。

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